逃走の線 op.3082008年制作、210cm×320cm、キャンバスに油彩
ギャルリー東京ユマニテ(2009年2月9日〜2月21日)
絵画―この一瞬の輝きを求めて
詫摩昭人(2009年2月)
音楽も文学も映像も、絵画に比べると時間軸を伴います。もちろん絵画にも物語を読み解くものもありますが、絵画の醍醐味は、一瞬で良いか悪いか判断できるところにあるでしょう。私の「逃走の線」の作品は、最後に幅2mの刷毛を振り下ろすことで完成としています。刷毛を下ろした後の、画面との一瞬の出会いを大切にしているからです。私自身は既に何百回も刷毛を走らせているので、大概の予想はつきますが、それでもこの方法では作品がどうなるのか解りません。最後に刷毛を走らせた時に画面の隅から隅まで完全に把握して作品を仕上げるのは不可能です。特に大画面の作品の場合は、自身の認識を超えたところで作業をしていると言えますし、例え小さな作品でもなかなか思うようにはなりません。この作品では一部分だけを修正することが出来ず、実際、失敗し絶望感に浸ることのほうが多いのですが、筆を振り下ろした一瞬の後で、成功したと思えたときの解放感は何物にも勝るものがあります。完璧な完成図が予想できたなら、魅力も半減してしまいますし、管理できがない部分を求めているのです。
イメージは、あえてどこまでも地平線の続く遠近法の整った広大な風景や都市の風景を選んでいます。広大な風景は秩序を感じさせます。自身の根柢のところにあるコンセプトには、相反するものを同時に存在させ、それをすり抜けていきたいというものがあります。東洋と西洋、主体と客体、ハッキリ見る・ぼんやり見るなど、横に広がる風景に、縦向きの線の緊張感を得たとき、様々な二項対立をすり抜け、生き生きとした前向きで自由なエネルギーが解き放たれた瞬間に出会えるのです。(展覧会パンフレットより)
逃走の線 op.3092008年制作、36.4cm×51.5cm、キャンバスに油彩
色彩美術館蔵
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